本書を手に取ったのは前回に引き続き著者の山口周さんの本が面白かったからだ。特に
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書)を興味深く読ませてもらった。以前やっていたブログに感想は書いたが後ほど改めてこのブログでも感想を再活させてもらいたい。最初に断っておくが私は経営に携わる仕事をしているわけでもないし、また管理職でもデスクワークですらない。頭脳労働をしていた時期はあったが、それでも短い期間である。そんな私がこれらの経済本を読むのは単に面白いからという理由だ。
本書は私のような経済オタクにとってある種の占いのような効果をもたらしてくれる。ちなみに私は占いは好きだ。経済オタクは常に未来を予測したがる。現在のトレンドから本書で解説される思考、行動様式の人材の需要が伸びますよということだが、実際個人の周りを取り巻く現実は一様ではなくトレンドから類推される事象には占いと変わらないマスに向けての解説がなされているようで面白い。決して本書が占いと同レベルと批判しているわけではない。問題はトレンドと自分を取り巻く現状を分析し個人の思考、行動に落とし込むことが大切だ。ここでは本書からどのような思考、行動を促せば具体的にニュータイプになれるのかを考察してゆきたいと思う。
まず第一章ではメガトレンド=変化として6つ挙げられている。その中で私が着目したのは社会のVUCA化という現象だ。VUCAとは不安定、不確実、複雑、曖昧という今日の社会を特徴付ける4つの形容詞の頭文字を合わせた言葉で本書から抜粋すると元々はアメリカ陸軍が現在の世界情勢を説明するために用い出した用語だということ。
なぜVUCA化の進行に着目したのかというと私たちが仕事で培ってきたスキルや経験というものが役に立たなくなる現象が起こっているからだ。一方で現実を見ると資格やスキルを高めようという風潮も以前として存在するわけでVUCA化を前に一体私たちは何をすればいいのかという疑問も残る。資格やスキルも悪い選択肢ではないし否定するわけでもないけれど変化に対しての対策としては硬直的のような気もする。このVUCA化という現象に立ち向かうために必要なのは具体的な資格やスキルなのではなく個人がそのような世界で自分の地図を持ちコンパスを元に行先を修正し続ける能力なのでないかと私は思う。
素晴らしいなと思ったのは第二章の3未来は予測せずに「構想」するで語られている言葉だ、抜粋すると、
今、私たちが暮らしている世界は偶然の積み重ねでこのようにできあがっているわけではありません。どこかで誰かが行った意思決定の集積によって今の世界の風景は描かれているのです。p65
私だけかもしれないが、どこか他人事として周りの世界を捉えがちで自分の行動や判断を過小評価しているところがある。いちいちグローバルに意思決定を結びつける必要は全くないが、それでも世界を作っているのは私たちなのは間違いないことを確認させてくれる一文である。他責ではなく自責で生きてゆこうというのもこの世界の成り立ちに少しでも貢献している自己という存在あってのことだろう。
この未来は予測せずに「構想」するということから生み出される行動は、こういう未来になって欲しいから今どのように行動したらいいかという能動的な目標を立てれるかどうかだと思う。VUCA化に立ち向かうための能力としても書いたが、自分の地図を持つということは自分の価値観を見定めることだし、コンパスとは学習のことである。批判を承知であえていうが、資格やスキルを身につけるよりも自分の価値観をより見定める工夫をし、その上でどのような学習が効果的かを戦略的に練る時間を設けることの方がよっぽど有意義な行動なのではないかと私は思う。
読んでいて思ったのはニュータイプを構成するキーワードの選定が今のトレンドに合っていてそれぞれのキーワードで一冊の本が書ける、またすでに刊行されているものがある。今併読しているTHINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放すもその一つだ。それだけ面白そうなテーマが詰まった本でここで全てを感想文を書くには勿体無いし、その胆力も実力もないのでこの辺にしておく。