dan-0127’s diary

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チャッター「頭の中のひとりごと」を読んで

 

この本を手に取ったのは「頭の中のひとりごと」確かにあるなぁと思い、それをコントロールできるならどんなにいいことだろうと想像したから。読了して思ったのは壮大なテーマを本にしたのだなと感じた。著者もまとめるのに苦労している様子が見られたからだ。

まずチャッターとは頭の中のしゃべり声であり、構成するのは「循環するネガティブな思考と感情」と本書では定義されている。私もそうだが、眠れぬ夜やふとした時間に過去の出来事を思い出してネガティブな感情に襲われることがある。程度の差はあれ誰にでもあることなのではないだろうか。これだけ聞くとチャッターは悪いものとしてだけ捉えられがちだがことはそう簡単ではない。

私たちはみな、心を利用して自らの経験を理解する必要がどうしてもあり、そうする際には言語が一定の役割を演じるのである。p32

つまり、自我を形成するにはチャッターは欠かせないということだ。私事で申し訳ないが、チャッターは決まって精神疾患が発生した以前の記憶ばかり強く繰り返す。これは私の仮説だが、自我を形成するためには自分の物語が必要でもしかしたら自我という物語を通してみた時に整合性が合わない部分を強く想起する役割がチャッターにはあるのではないかと考えた。トラウマとの関係性はよくわからないが、自分にとって都合の悪い部分を知らせてくれる装置なのではないかと思う。

後半はチャッターを鎮めるための対策が続く。特に面白かったのが、チャッターに対して二人称を用いるということだった。「わたし」を「あなた」に、もしくは自分の名前で呼びかけるのである。そうすると対象を客観的に捉えることができチャッターを制御しやすくなるという。またチャッターを制御するのに公園などの自然が有効であることも書かれてある。個人的に新しい視点だなと思ったところを抜粋すると、

近藤麻理恵と彼女の2014年のベストセラー「人生がときめく片づけの魔法」が世界的影響力を持つ理由も、それによって説明できるかもしれない。ときめきを与えてくれるものだけ残すという彼女の片づけ哲学は、環境に秩序をもたらすことで感情に影響を与えるという戦略だ。p212

片づけがチャッターを制御するのに有効だということを示唆している。不思議なことにマインドフルネスとチャッターとの関係性には触れられていなかった。私の勝手な見解だとマインドフルネスこそチャッターを鎮めるためにする方法だと思っていたからだ。タイトルにもあるように最後にはチャッターをコントロールするための26の方法がまとめられている。最初に書いたように頭の中のひとりごとは私たちには欠かせない構成要素の一つであり、チャッターとひとくくりにするにはあまりに大きすぎる枠組なのではないかと感じた。それゆえに面白みのある題材であり本にするにはキャッチーなタイトルではある。